機動戦士ガンダム「宇宙のイシュタム」|tonbori堂漫画語り-Web-tonbori堂アネックス

機動戦士ガンダム「宇宙のイシュタム」|tonbori堂漫画語り

2014年3月28日金曜日

anime manga ROBOT SF

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 今回は機動戦士ガンダム『宇宙のイシュタム』という漫画をちょっとご紹介したい。『宇宙のイシュタム』は角川のガンダムエースで2003年から2006年の3年にかけて連載されていて中断ののち単行本で決着というカタチをとっている。(全4巻)

機動戦士ガンダム「宇宙のイシュタム」書影/角川書店/飯田馬之介:著
機動戦士ガンダム「宇宙のイシュタム」書影/角川書店/飯田馬之介:著

Amazon.co.jp: 機動戦士ガンダム宇宙のイシュタム 1 (角川コミックス・エース) : 飯田 馬之介: 本 

ガンダムエースとは

 ガンダムネタオンリーという30年前では考えられなかったコミック雑誌である。といってもバンダイあたりのサイバーコミックとか、そういう則の漫画誌も全く無くはなかったのだがここまで番宣、販促的な漫画誌をバンダイものっかっての創刊というのは非常におどろきでありとうとうここまで来たかという思いでもある。

機動戦士ガンダム/宇宙のイシュタム

 作者は飯田馬之介。亡くなられた神田武幸監督(バイファム)のあとを引継ぎ『08小隊』を監督した男である。画風はまあカバーを見て欲しい。

 ちょっと初期のナウシカの連載を思い出させる。これはなんか関係あるんだろうか?よく解らないが。ともかくかなりリアリズム重視だしガンダム世界での重要ファクター、というかこの虚構を成立させているミノフスキー粒子でジオン公国軍がいかにして緒戦をものにしたかとか戦争の裏でうごめくものとか純粋に軍人の責務を全うしようとする連邦軍の戦艦のクルーとか読み応えもあるしラストの驚愕の展開もかなり驚かされた。サバイバルするために双方が繰り出す手段は奇麗事だけじゃないいわばガンダム版『ブラックホークダウン』ともいえる戦場の残酷さを抉り出している。


 最近、安彦さんのガンダム漫画THEオリジンもこのアイランドイフイッシュ落着の降りを書いてたりするので、整合性とかいいだすときりがないけれどジオンのモビルスーツパイロット、エリザ・ヘブンと地球連邦軍マゼラン級戦艦トーチタス火器管制科士官ナダ・チノミ中尉を中心とした物語が紡がれていき最後のコロニ―落着までの時を描いている。もちろんあらっぽい部分もあるがガンダム世界のお約束事を使おうとしている点が印象に残る。例えば連邦軍の主力兵器はもちろんメガ粒子砲もあるのだが無線誘導の高機動飛翔体に搭載された核ミサイルであったりジオンがコロニー内の残敵掃討作戦でルッグン偵察機のマイクロフォンを使う描写などマニアならにやりとする描写が多い。


 そして18メートルの巨人と兵士の戦いや宇宙空間での距離感の把握しにくさをガンダムセンチュリーで読んだ人ならああと思うシーンなども用意されている。また飯田監督の『機動戦士ガンダム第08MS小隊』に登場した主人公シロ―・アマダの登場など自作品のリンクもあり、そういう部分も含めてちょっとミリタリーオタに設定オタな人なら結構楽しめる描写がある。監督が本来やりたかった宇宙世紀モノ(第08MS小隊は急逝された神田監督より引き継いだものである)というのはこういうことだったのかもという意味でも非常に興味深いしなにより初期のMS戦闘と対抗する連邦軍というのは新しい視点である作品としておすすめしたいガンダム漫画である。


追記:20170515

 2010年、飯田馬之介監督は早逝されました。享年49歳。肺がんだったそうです。まだまだ活躍できたと思うと本当に残念でなりません。飯田監督が残した中でもこの漫画はガンダムの本流ではありませんが、これをアニメーション化されたらなあとたまに夢想することがあります。それは同じ宇宙世紀を範にとった『サンダーボルト』や『UC』などを観るにつけそう思います。


 どちらもMSが主力になった時代を描いており、その前の話を書いているのは安彦さんのTHEオリジンなど少ないのが現状です。オリジンは確かにMSが主力になる前の話からですが本編のリメイクという意味合いなので外伝ではあまり多くはないしましてや、コロニー落としを題材にした作品はもっと少ないはずです。そういう意味でもこの作品の再評価が高まればなと考えております。

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